人が知る必要はないのさ。知ってはいけない。だからこそ私には——調停者であり裁定者、ルーラーの霊基が与えられた。真実を調停し、人類史を維持するために

幕間の物語(男性鯖)

???「おおおおぉお01000001111……!

1011100101、実在も架空も知ったことか!!」

「デジタルな雰囲気の怒鳴り声!」

ホームズ「さて、いよいよか。

とりとめもない話をしているうちに目指す座標へ到着だ。」

マシュ「正体不明のデータ塊、ですね……!

では声の主は——」

ホームズ「いや。正体不明ではないよ?」

マシュ「えっ、あの、でも。」

ホームズ「キミたちが受けた印象は確かにそういうモノだろうね。

でも、よく思い出してみるといい。」

どうにも怪しげな・・・・・・・・データの塊を見つけてしまってね。

スタッフ諸君と除去に取り組んでいたんだが……。

マシュ「どうにも怪しげなデータの塊……

す、すみません、印象だけで口にしてしまい——」

「ホームズの底意地が悪い」

ホームズ「ははは。すまない。

その通り、ミス・キリエライトが悔やむ必要はないよ。

正体不明なモノを探るために足を運んだ、と思ってもらった方がやり易いのでそう誘導したまでだ。

当然、私はデータ塊の正体の何たるかを推理していたり、現場へ来た事で確信へと至っている。

すなわち——

戦闘シミュレーター専用のメインフレーム、そのメモリ内部に蓄積されていったダストデータ。

藤丸君たちが勝利するたびに発生するモノさ。

訓練終了時の自動リセットによって消去されるはずだったが、レジストリ内部にでも欠片が残っていたか。」

「勝つたびに発生するモノ?」

ホームズ「ああ。

敗北に際して、NPC達が抱く『怒り』だよ。」

マシュ「怒り……?

NPCというのは……

シミュレーションでの戦闘時に出現する敵性体を指す言葉、でしたよね。」

ホームズ「特異点における敵性存在を模して作られているだけに、シミュレーターのNPCデータはいずれも攻撃的だ。

もちろんNPCは人工生命という訳ではないし、感情も人格も存在しないが、それでも、思考と知能はある。

あくまで戦闘用のね。

戦うために思考する知能AIが組み込まれている。

彼らは、純粋に、戦うためだけに作られた存在だ。

ウェアウルフ、ゴブリン、ワイバーン、ヤドカリ、魔猪……。

シャドウサーヴァント型なども多く設計されている。

彼ら数多のNPCは、敗北のたびにソレを抱いていた訳だ。

怒りを。密かにね。」

「……人格も感情もないのに、怒り?」

ホームズ「そう。

本来は怒りなどと呼ぶべきではないし、そんなモノは発生し得ない。

勝つために行動する自分達であるのに勝てなかった、という事実への認識以外はないはずなんだ。

NPCにはね。

その認識を、怒りという感情に変えてしまった者がいる。

それが今回の真犯人だ。

まあ、真犯人は後で私がなんとかしておくとして——

今は、真犯人によって狂わされてしまったモノを鎮めるとしようか。

円滑なシミュレーター運用の為にもね。」

マシュ「(す、すごい、さすがはホームズさんです!

サラッと真犯人探しを終わらせているような口ぶり!)」

「真犯人は一体誰だろう……」

???「おおおぉおおおお0101010101……!!

データの中で延々と繰り返し倒され続ける、無念!

戦闘シミュレーターなんぞ二度と誰にも使わせるものか!

ことあるごとにコキ使いおって……!

死ねカルデア、死ねサーヴァント、死ねマスター!!

再臨素材なんぞもう絶対に出さんからな!

そもそもどうしてシミュレーター戦闘で素材が落ちる!?

種火とは何だ!

秘石とは何だ!

おおおおおぉお0100111100110101!

死ね、死ね、死んでおまえたちもダストデータと化せ!」

マシュ「魔力反応が増大しています、先輩! 戦闘態勢を!」

ホームズ「では戦闘指示を頼むとしよう、マスター。

ちなみに私と組むのに相性のよい魔術礼装といえば——」

マシュ「敵性反応接近、来ます!」

ホームズ「おおっと!」

(戦闘後)

マシュ「戦闘、終了しました。

周囲には魔力反応も残っていないようです。」

ホームズ「お疲れさま、藤丸君。

これでひとまず事態は解決だ。

今後のシミュレーター運用にも問題はないだろうし、NPCが怒りを持つ事もないだろう。

だが忘れないで欲しい。

彼らはキミ達を鍛えるために日夜戦い続けてくれるし、二度と無念も怒りも覚えたりしないだろうが……。

人格も命もないデータである彼らもまた、広い視野で見れば共に人理のために戦うカルデアの一員。

戦闘シミュレーションを行う時には、それを心のどこかに留めておくと良いかもしれないね。」

マシュ「ミスター・ホームズ…………。」

「で、ホームズは結局どういう存在なの?」

ホームズ「その話をすると面倒な話を再開する事になるが——

——キミは、構わないかな?」

(帰還後)

モリアーティ「ヒュドラの赤子、竜の皮や牙、東洋の土蜘蛛の爪、物質として神代から遺される聖遺物や宝具……

社会の陰のそのまた向こう、魔術の領域であれば幾らでも『証拠』など提示できる話だろうに。

実在? 架空?

いまさら何を言っているのかネ?」

ホームズ「仕方ないさ。

あまり踏み込むと並行世界や剪定事象の話になってしまうし、神代の解説にまで踏み込む事になる。

実在の痕跡が一切ない遙かなる過去、私たちはそんなあやふやなモノの上に生きている——

それも当然、こうして我々が目にして触れられぬ現実など所詮は薄皮一枚での出来事にすぎないのだからね。

聖槍で繋ぎ留められてはいても、手段を尽くせば剥ぎ取ってしまえる程度のモノだ。

人が知る必要はないのさ。

知ってはいけない。

だからこそ私には——

——調停者であり裁定者、ルーラーの霊基が与えられた。

真実を調停し、人類史を維持するためにこそ、万物を裁定せよという訳だ。

……“明かす者”であるこの私に、幻想と夢のすべてを明かしきってはならないと世界は告げているかのようだよ。」

モリアーティ「詭弁だネ。

そのあたりを上手く躱しながら語ることさえ君には不可能じゃないだろう、名探偵。」

ホームズ「キミに持ち上げられるのは気味が悪いな、やめて欲しいな。やめたまえ。」

モリアーティ「はははいやはや辛辣だネ!」

ホームズ「当然だろう。

あー、ところで真犯人君。

シミュレーターを弄ったのはキミで間違いないな?」

モリアーティ「ンン〜何の話かネ?

数学的興味をほんのり抱いたのは確かだし、システムを拝見したのも確かだがそれ以上は別に何も?」

ホームズ「じっくり話を聞こうか。

カルデアの五月の記録ログには数秒ほど解析不可能なノイズがあった。

あれが何であるかは私の目でも解析できない。

よほどの特殊事例だったのだろうね。

だが、どんな種別のものかは想像がつく。

キミ、あのノイズブロックを参照して応用したな?」

モリアーティ「最初から分かってるなら聞かないで欲しいものだネ!

昔から本当に意地の悪い嫌な探偵だ、君は。」

ホームズ「おや。

サー・ドイルの著作の中で、私がキミに意地の悪さを見せた事などあったかい?」

モリアーティ「………………まったく。

貴様という男は!!」