これが真に成功し、世界を覆い尽くせば、人類は遂にエネルギーの格差から解き放たれるのだよ。このシステムであれば世界の何処までも電力の恩恵が!

幕間の物語(男性鯖)

テスラ「——交直論争!

またの名を電流戦争!

今更、と貴方は言うかもしれないが聞いて欲しい。

これこそはまさしく、私と奴の永遠無限の闘争の名!

交流か!

直流か!

無論、言うまでもなく交流が優れているという事実は21世紀現在の電気文明がすべてを証明している訳だが、1891年当時の奴は、頑なに認めなかった。

己が利得利権のみを欲する邪悪な奴らしき態度ではある。」

テスラ「そこで私が用意したものこそ!

我が叡智と研鑽の結晶たる高周波高電圧技術である!

すなわちはテスラ・コイル、テスラ回路サーキット、そして油侵式変圧器——

ウェスティングハウス社によるナイアガラ発電所実験が後に行われたが、当然!」

エレナ「すごいわ、ミスタ・テスラ。

流石は現代の雷神を名乗るだけのことはある。」

テスラ「はっはっはもっと言ってくださいレディ、はっはっは。

そうなのです。

私は成し遂げた!

ベンジャミン・フランクリンのかつて成した偉業、稲妻の証明、避雷針の発明!

それを……超えたのです!

我こそは偉業達成者!

我こそは雷電博士!

ゼウスを、ユピテルを、トールを、ペルクナスを、数多の天空神を過去のものへと変えた人類神話の体現!

三相交流電流の果てに!

人類の希望はある、と!」

エレナ「……ふんふん。なるほど。」

「……それ、よく言ってるけど。人類神話って何?」

テスラ「おお、マスター。

そこにいたか。

いや、或いはそうか。

私の定期演説・・・・を聞きにきたのかね?」

「定期……!?」

エレナ「ふふ。そうそう。

たまにこうして、あたしに思いっきり吐き出すのよね?」

テスラ「ははは。

泰然自若を自負する私ですが、そう率直に言われるとやや恥ずかしい。

……かつて人類史を生きたニコラ・テスラなる男、過去の己が何を成して、何を成そうとしたのか。

自己の再定義にこうして毎度付き合っていただき恐縮です、レディ。」

エレナ「あたしはいつも楽しく聞いているから、気にしなくてよくてよ?」

テスラ「助かっていますよ。本当に。

大言壮語を吐き続けるにしても、それなりの……慣らし運転は必要ですからね。

さて、マスター。

私が時折口にする人類神話とは何か、だったな。」

「よく言ってるやつね」

テスラ「はは、それもそうか!

何、難しい話でもない。

単純なことだ。

人類神話は、言葉通りの人類神話だ。

新たなる神話。

神の足跡を追い崇める神話ではなく、リアルタイムで進む人類の足跡こそが……

新たなる神話であろう、とね。」

「伝記とかでは読んだことない……」

テスラ「生前はそうだな、少なくとも本にしたことはなかったはずだ。

何せ、このあたりの神話云々へ本格的に踏み込むには、魔術師をはじめ世界にはあまりに専門家が多すぎる。

詩人にして音楽家、哲学者でもあったこの私だが……

魔術師でもなければ解釈学者でもなかったのだよ。

ポール・リクールには存命中に話を聞いてみたかったが。」

エレナ「ふうん。

そんなにこだわりがある訳じゃないってことかしら。

にしては、随分口にするわよね?

天の英霊も地の英霊もあんまり好きじゃないんでしょう。

なんだったかしら。

ほら、あなたの言葉。

“現在は彼らのものかもしれないが……”」

テスラ「“未来は私のものである”

ははは。

いや、そういう意味で述べた言葉ではないがね。

まあ、個としての神々や伝説の英雄たちに何らかの恨みがある訳ではないさ。」

エレナ「あなたもしかして、アレかしら。

神になりたい?

現代文明、いいえ、電気文明を司る新しい神・・・・・・・・・・・に。」

テスラ「いいや、まったく思わんさ!

人類の総体を神と呼ぶなら多少は面白いがね。

神なる雷電、神なる力を得たからには……

文明全体、人類全体が進歩すべきではあるだろう。

そう、そのきざはしこそが世界ワールドシステムなのだから!」

「すごいエネルギーのシステムだっけ」

テスラ「はは、天空と雷電を真に支配するシステムだとも。

交流送電!

世界ほしの隅々にまで行き渡る大量のエネルギー!

有線のくびきから解き放たれた、無線の電力供給機構!

これが真に成功し、世界を覆い尽くせば、人類は遂にエネルギーの格差から解き放たれるのだよ。

余すところなく! 平等に!

このシステムであれば世界の何処までも電力の恩恵が!」

エレナ「ねえ、すごいでしょうこの人。

言うことが大きいったら!

なにせ星の規模だもの。

ああ、ええ、とってもマハトマだわ。」

テスラ「はははは、もっと褒めてくださって構いませんよレディ。

ああ実に気分が良い!」

エレナ「ああ、でもそうだわ——」

テスラ「?」

エレナ「あなたのその“世界”って、なんだか……

大源マナの概念に似ているわよね?

言われたことない?」

テスラ「んん、そういった指摘を受けたのは初めてではないが、あまり私としてはぴんと来ませんな。

ああ——

ここで明確にしておきましょう。

私は、マナなるものとオドなるものをあまり好んではいないのです、麗しき我らのレディよ。

神代は終わった。

真エーテルは消えたという。

神秘は遠く人類から離れ、神話と伝説は過去の彼方へと薄れ、幻がごとく揺らぎ……

やがて人類は自らの手で文明を、進歩を、科学を確立し、一方で神々はその実体を失い、朧気な神霊と化した。

魔術師たちは、この世界をそのように語る。

かつて神秘の溢れた星は……

素養なき者でも多くの技術と力の恩恵に与れる、文明に溢れるようになったのだと。

……………………だが。しかし。

果たしてそうなのでしょうか、レディ?

未だ、地球上にはマナなる大魔力が世界に顕れており、神秘なるものは未だ暗躍し……

そして遂に、世界ほしを滅ぼしかけている。

人理焼却という大偉業も、白紙化地球という大異変も、神秘なるものの行き着く果てなのだと私は認識する。」

テスラ「しかし!

しかしです!

そこへ行くと私の世界ワールドシステムは安全だ!

言うなればそう、安全神話・雷電降臨とでも——」

(大きな着地音)

「エジソン!」

テスラ「くっ、私とレディとマスターの蜜月に水を差すか!

遅かりしミスター・すっとんきょう!」

エジソン「ミスター・すっとんきょうは貴様だテスラ!

あと遅かりしホームズみたいに言うなムカツク!

ぬぁーにが世界ワールドシステム、ぬぁーにが地球の定常波か!

まぁーだそんな寝言を言っているのかテスラ!」

テスラ「シューマン共振を知らんのか莫迦め!

生前の知識しか蓄えのない凡骨はハァーこれだからな!」

エジソン「知ってるわ!

生前に証明できなかったくせに偉そうに言うなバーカバーカ!

貴様はシューマン以下!」

テスラ「え?」

エジソン「?」

テスラ「シューマン君はほら、あれだ。

私の後追いだろう?

私のシステムにクリティカルな着想を得て、そこからシューマン共振を導き出したのでは?

たとえ論文にそう書いていなかったとしても、実際のところは——

そうなのでは?」

エジソン「……ほ、本気で言っていやがるこのうぬぼれ天才野郎!

そういうところが私は昔からうおおおおあああ電気滑り!」

テスラ「おおっと電気が滑り返した。」

エレナ「はい! はいストーップ!」

エジソン「むっ……。」

テスラ「ま、まあ、貴女が言うのであれば……。」

エレナ「はい。

はいはい、両者電気をおさめること。

あなたたちは現代文明の神様みたいな存在なのに、喧嘩っ早いところまで雷電の神様たちの真似をしなくてもいいんじゃなくて?」

テスラ「い、いや、トール神は確かに短気ではあるが、すべての雷神がそういう訳では……。」

エジソン「へえー、へえー。

テスラ君はあれかぁ、隠れ雷神ファンなのかなぁ?」

テスラ「はあ?」

エジソン「ん? 何かな?

蚊が止まったかな?

彷徨海には蚊なんていたっけか?」

テスラ「……風がそよいだな。

ふふ、こそばゆい。」

エジソン「………………こそばゆい?」

テスラ「蚊だと?」

「二人とも! 一瞬で再戦しない!」

紳士と獅子「…………むむ。」

エレナ「はいはい、もーう!

図書館で喧嘩しないの!

司書さん……紫式部を呼んじゃうわよ?

あの人、絶対喧嘩してるあなたたち見て泣くわよ?」

(ビクッとする紳士と獅子)

紳士と獅子「レディを泣かせるのは紳士としては三流!」

テスラ「……そうだな。

ここは公共の施設、我らが待望した図書館なのだから。」

エジソン「あまり騒ぎすぎるのも良くない。

そう、ブラヴァツキー女史の言う通りではあるな。」

テスラ「電気を滑らせるのは無論だが、あまり大声で論を交わすのも控えるべきか。

そういう意味では、ああ!

先ほどのレディへの語りかけも大声に過ぎたか!」

エレナ「えへん、そこは大丈夫。

音響抑制の魔術をあらかじめ掛けておいたから。

大声出してもぜんぜん響かないから、おしゃべりしてもOK。

だからといって電気とかはだめよ?

あなたたちの魔力でバチバチやったら、魔術弾けちゃう。」

エジソン「はい。」

テスラ「申し訳ない。」

エジソン「……んー。

テスラ君、ここは紳士協定を結ぶのはどうだろう?」

テスラ「ほう?」

エジソン「今後、地下図書館での電流戦争再開は禁止、とな。

我ながらエレガントな提案だと思う。」

テスラ「ふむ……。」

エレナ「(……毎回喧嘩するのって電流戦争の続きだったのね)」

テスラ「いいだろう。

私も、既に決着のついた戦争を続けるのは本意ではない。」

エジソン「ほう。」

テスラ「交流こそ至高。

直流こそ野蛮。

これは既に結論付けられた事実だからな……

いつまでもこだわり続けるのはあまりに愚かに過ぎる。」

「ニコラ・テスラさん? もうそのへんで……」

エジソン「…………。

………………………………………………。

…………ああ、確かにな。愚かすぎる。

世界ワールドシステムなどと、夢物語にしかすぎん与太話を死後も追い続けるなど。

愚かしすぎて涙が出てくるほどだ……」

「あっ、ちょっと!」

エジソン「停戦する気ゼロどころか殴る気満々で挑発してくるのが悪いだろうがミスター・すっとんきょう!

こうなれば!

その妄念を私がここで止めてくれる!

発明王エジソンが!

ここで、雷電博士の暴走を止めてやりますぞーっ!!」

テスラ「面白い!

はははははははは魔力上昇!

貴様とこの霊基でやり合うのはいつ以来だったか!?」

エレナ「あーーーーーもぉーーーーー!

あたしは図書館が壊れないように結界を張るから、あとはあなたがなんとかしなさいね、マスター!」

「無茶ぶりですよ!」

エレナ「あなたなら! できる!」

エジソン「うおおおおおおおお第236次電流戦争、再開!

今こそ出でよ、機械化歩兵軍団!!」

「こんなに沢山……!?」

テスラ「特異点に別召喚された自分の配下を呼びつけるとか、チートか貴様ァ!」

エジソン「私は割と例外的に特異点にいた英霊に近い存在なのだ!

でなければ獅子の頭な訳なかろう、この美形発明王が!

あ、獅子の頭はこれはこれでウルトラ格好いいがな!」

テスラ「……なんとも騒がしくなってしまったが、マスター。

大変申し訳ないが力を貸してくれるかな。

一騎打ちならまだしも、あれだけの機械化歩兵が相手ではな——」

「貸し一つだからね!」

テスラ「ありがたい!

さあ——

久しぶりに、三相交流電流の冴えを見せるとしよう!」