科学者の技術と期待ではなく、神々の権能と祝福…いや…呪いと共に生み出された『完全な人間』それがフワワだよ。

幕間の物語(男性鯖)

(強力な雷音)

 

モードレッド「フラン!?

おまえ、外に出てろって……

…………マスター!?」

 

エルキドゥ「おや、どうしたんだい、マスター。

ここは危ないよ?」

 

「とりあえず、矛を収めて! この喧嘩、自分に預からせて欲しい!」

 

モードレッド「……マスターにゃ、関係ねえ事だろ。

おまえがわざわざ身体張るような話じゃねえよ。」

 

「殺せば気が晴れる、って話でもないでしょ?」

 

モードレッド「……。」

 

フラン「ウゥー……。」

 

モードレッド「ハァ、わかったわかった。次は宝具を当ててでも止めに来そうだしな。」

 

「エルキドゥは事情を説明して」

 

エルキドゥ「…そうだね。

理由を完全に把握したわけではないけれど、僕の発言が君の赫怒かくどを呼び起こした、という状況は理解した。

君の事を軽んじての発言ではない、と信じて欲しい。

その上で、誤解をさせた事は謝罪しよう。

すまなかった。」

 

モードレッド「………………。

……………………————————。」

 

「モードレッド……」

 

モードレッド「チッ……、わかったよ。

そんな目で見んなよ、マスター。

どのみちひと暴れして、ちったぁ気が晴れた所だ。

この生モヤシも、一応はおまえのサーヴァントだからな。

確かにオレの臓腑はらわたを煮えたぎらせやがったが、侮辱の意味合いが無いなら軽蔑に値する問いじゃあねえ。

マスターがこいつの言葉を保証するってんなら、その意図は無かったって信じてやるさ。」

 

エルキドゥ「そうだね。

僕が侮蔑の意図を向ける相手がいるとすれば、イシュタルだけだと断言できる。

たとえ君がこの世の全ての悪を煮詰めたような存在であったとしても、僕はそれを尊重しよう。」

 

モードレッド「いちいち引っかかる物言いしやがるな、こいつ……。

慇懃無礼いんぎんぶれいなケイかっつーの。」

 

マシュ「良かった……

ありがとうございます、モードレッドさん。

ですが、何故エルキドゥさんは応戦していたのですか?

誤解なら護りに徹するなり逃げるなりできたのでは?」

 

エルキドゥ「ああ、それは簡単だよ。

相手の怒りと敵意が本物であると感じたからさ。

相手が何に怒りを覚えたのか、どのような殺意をこちらに向けているのか。

戦いを受けて立って肌で感じる事で、より詳細に相手を理解する事ができる。」

 

「結構バトルジャンキーだよね、エルキドゥ」

 

エルキドゥ「戦闘中毒者バトルジャンキー……

という程ではないと思うけれど……。

確かにギルと三日三晩戦った時の高揚は、英霊になった今でも回路に焼き付けられている。

ギルの方も愉しそうだったよ。

いつかシミュレーターで再現してみるのもいいかもね。」

 

マシュ「流石にそこまで長いシミュレーターの使用は許可がおりるかどうか……。

とにかく、一旦シミュレーターの外に出ましょう。

ダ・ヴィンチちゃんに報告しなければ。

食堂でパールさんがベリースムージーを作っておられたので、それを飲みながらでも……。」

 

ダ・ヴィンチ「やあ、お疲れ様。

こちらでも状況は観測して把握している。

早く食堂に行くといい。

みんな待ってるだろうからね。」

 

マシュ「(みんな……?)

はい!

それでは先輩、皆さんと食堂に行きましょう。」

(部屋を出る音)

 

マシュ「え……?」

フラン「ウゥー、アー!?」

 

「なんでカルデアの中に魔獣が!?」

 

エルキドゥ「これは……シュメルの……?

いや……僕が知っているものとは少し……。」

 

モードレッド「なんだか知らねぇが、丁度いい。

まだ、完全にゃスッキリしてなかった所だからな。

テメエらをぶっ飛ばして——

オイ! 獲物取るんじゃねえよ!」

 

エルキドゥ「悪いね。

マスターを護る事を最優先事項に設定しているんだ。

それに、怒るのは早いんじゃないかな。

君の獲物も、まだまだ充分にいるようだし。」

モードレッド「チッ。

確かにおまえも、マスターのサーヴァントらしいな。

なら、今は共闘してやる。

足手まといになるんじゃねえぞ、ランサー!」

 

(戦闘後)

 

マシュ「今のはいったい……。

ああッ! 管制室の皆さんは……!?

皆さん、ご無事ですか!?

いったい何が……」

 
(扉を開く音)

早く食堂に行くといい。

みんな待ってるだろうからね。」

 

マシュ「ダ・ヴィンチちゃん……?」

 
エルキドゥ「これは……。」

 
モードレッド「おいおい、何がどうなってんだ?

管制室の中、誰もいなくなっちまってるぞ。」

 

フラン「ウウ……ウゥ?」

 

エルキドゥ「……行こう。食堂だ。」

 

マシュ「え?」

 

エルキドゥ「僕の感覚器センサーが正常なら、『みんな』は……そこにいる筈だ。」

 

(走って扉を開ける音)

「!? いつのまにかレイシフトした!?」

 

モードレッド「なにがどうなってやがんだ?

なんで食堂の中が森になってんだよ。」

 

フラン「ウ?

ウー! ウァー!」

 

マシュ「どうしたんですか、フランさ……。

……え!?」

 

「今、入って来た扉が……消えてる……」

 

モードレッド「はッ。

閉じ込められた、って事かよ。

森なのに閉じ込められたってのも変な話だけどな。

しかし……随分でっけえ木だな。

なんだこりゃ?」

 

エルキドゥ「レバノン杉……だね。」

 

「杉? でも、どっちかっていうと……」

 

エルキドゥ「マスターの国の言葉だと『杉』と呼ばれているけれど正確には松という植物の系統だよ。

50メートル近くの大きさになる巨木で、船の資材としてよく使われていたね。

……ここまで巨大な森は、マスターの時代にはもう残っていないと思う。」

 

マシュ「レバノン杉の森……。

それは、もしかして……。」

 

エルキドゥ「ああ、その通りだよ。

ここは……。

僕とギルが終わらせた・・・・・、神々の森だ。

誰がなんの目的で、僕たちをここに導いたのかは解らない。

ただ……この場所という事hあ、高確率で僕を対象とした誘導だろうね。

マスターたちを巻き込んでしまった事、申し訳なく思うよ。」

 

「気にしないで。カルデアにいたら、こんなの日常茶飯事だから」

 

モードレッド「……つうかよ。

『みんなが居る』とか言ってやがったろ。

ありゃ、どういう意味だ。

カルデアの連中がいるってわけじゃねえだろ。」

 

エルキドゥ「……そうだね。

僕のシステムの根幹。

あるいはシステム阻害の根本に関わる部分ではあるけれど……。

君にも深入りした問いを放った以上、黙っているのはフェアじゃなかった。

もちろん、マスターに対しても。」

 

マシュ「システム阻害……?」

 

エルキドゥ「心残り……とも少し違う。

死ぬ時に遺した悔恨は、に対しての想いだけだ。」

 

「そういう事、割と隠さず言うよね、エルキドゥ。そういえば、王様とは話とかしてるの?」

 

モードレッド「おいマスター。

どうせ金ピカ野郎の事だろうが、オレの前で気軽に父上以外を『王様』って呼ぶな。」

 

エルキドゥ「そこは我慢してもらうしかないね、モードレッド。

彼はウルクを背負う立場だ。

マスターと二人きりの時はともかく、人目のあるところではギルガメッシュ王と呼ばないと。

まあ、戦いを挑まれてもかまわないくらい親しみを抑えきれないなら、略称でもいいだろうけどね?」

 

モードレッド「あーそうですか。

はいはい、ごちそうさま。

つーか、あの偏屈な金ピカとダチってマジか?

あいつ、絶対友達とかいねえタイプだと思ってたのによ。」

 

エルキドゥ「だとしても、僕とギルガメッシュは親友だ。

唯一無二の存在だと断言できる。

たまに会えば割と長く言葉を交わすけど、毎日積極的に会って話す、という事は少ないね。

お互いを理解するのに、言葉はそんなに重要じゃないんだ。」

 

「なるほど、モーさんとフランみたいな」

 

フラン「ウゥ? ウー。」

 

モードレッド「おいおい。

マスターはわかんねえのかよって言ってるぞ。

大体わかるだろ、普通。

あッ!

つうかよ、オレにあんな事を聞いたって事は、フランにも何か変な事を言ったりしやがったのか?」

 

エルキドゥ「いや?

彼女は確かに作られた存在だけれど、僕からすれば、普通の生命体と変わらない。

博士の手で『呪い』に近いシステムを組み込まれていたなら、あるいは興味を持っていたかもしれないけれどね。」

 

フラン「ウー?」

 

モードレッド「……なるほどな。

ったく、本当にまどろっこしいやつだな、おまえ。」

 

エルキドゥ「すまないね。

自分でも、他者に受け入れられがたいとは思っているよ。

それに……。

——ッ!

……マスター、マシュ。

少し下がっていた方がいいね。

『彼女』が……

いや……これは……『みんな』が僕に気付いたらしい。」

 

マシュ「?

エルキドゥさん、『彼女』に、『みんな』とは……?」

 

エルキドゥ「僕の、最初の友達さ。

……いや、僕の育ての親と言ってもいい。」

 

マシュ「育ての親……?」

 

モードレッド「来るぞ、マスター!

気を付けろ!」

フラン「ウァア……!」

 

モードレッド「なんだこいつら……。

これも、バビロニアの魔獣って奴か?」

 

エルキドゥ「いいや……。

彼女は……いや、彼女『たち』は……。

——人間だよ。」

 

「……人間?」

 

エルキドゥ「ああ……久しぶりだね。

本当に、久しぶりだ……。」

 
モードレッド「なんだこいつら!?

喋った……のか?」

 

マシュ「一つ一つの音は別の魔獣から放たれたようですが……。

それが繋がって、言葉に……。」

 

エルキドゥ「……。

そうか、『君たち』はもう、僕と別れた後の『君』なんだね。

一つの姿に融合していないから、もしかして……と期待したんだけれど……。

それは都合が良すぎるか。

でも……それでも、敢えて尋ねたい。

欠片でもいい。

残滓でも構わない。

君はもう……この森に残ってはいないのかい?

——フワワ。」

 

???「『フ』 『ワ』 『ワ』」

 

マシュ「——ッ。」

 

「フワワって確か……」

 

エルキドゥ「僕とギルで倒した、神の森の番人だよ。」

 

マシュ「神々の命令でレバノン杉の森を護っていた番人で、とても恐ろしい怪物だと……。

あのギルガメッシュ王が怖れたという逸話がある時点で、どれほど強力な生物だったか想像できるかと……。」

 

モードレッド「あの金ピカが、こいつらをか?

そんなおっかねえ連中にゃ見えねえが……。」

 

フラン「ウゥ……。

ウー、アウアー。」

 

モードレッド「なんだよフラン。

……『まだ組み上がってない』って、なにがだ?」

 

エルキドゥ「!

そうか、君には解るんだね。

……確かにフワワは……あの子たちは、生まれる前の君によく似ているかもしれない。

組み上げたのが、肉体主体か魂が主体かの差はあるけれど。

科学者の技術と期待ではなく、神々の権能と祝福……

いや……呪いと共に生み出された『完全な人間』。

それがフワワだよ。」

 

マシュ「完全な人間……?」

 

エルキドゥ「詳しく話しておきたい所だけれど……。

それは、状況は許してくれないらしい。」

 

???「『ダレダ』『ダレ』『タノシイ』『ダレダ』『オマエハ』『カナシイ』『マモル』『モリヲ』『タスケテ』『ニクイ』『モリヲコワス』『たす』『テキ』『イタイ』『イタイ』『ウレシイ』『けて』『カミサマ』『コロシテ』『コロセ』『タスケテ』『ううん』『モリ』『マモル』『タスケ』『タスケテ』『タスケテ』『ちがう』『タスケテ』『シネ』『テキ』『ちがう』『ニンゲン』『カミサマ』『コロセ』『わたしは』『コロス』モリ』いい』マモル』『モリヲ』『ダレ』『オレハ』『ワタシ』ボク』ダレ』ア』ユメ』オマエ』にげ』イヤダ』シヌ』シネ』て』コロセ』『アァ』『イタイ』『え』『クルシイ』『ドウシテ』『ヤダ』『ギアァァ』『るき』『イタイ』イタイ』イタイ』イタイ』『ニクイ』『ニクイ』『ニクイニクイコロスコロシテコロシネコロシテコロシテどぅシネシaaaaaaaaa』」

 
モードレッド「なんだかわからねえが、来るぞ!

おい、やっちまっていいんだよな!?」

 

エルキドゥ「そうか……。

誰の意図かは知らないけれど……。

僕に、もう一度『状況を再現しろ』と言うんだね。

……無論、迷わないとも。

今の僕は、サーヴァントだからね。

僕はランサー、エルキドゥ。

人理の護り手として『再起動』した存在だ。

ここでマスターを脅威に晒すわけにはいかない。

たとえここが、どのような場であっても。

統合した別個体キングゥの為にも、僕は僕としての役割を果たそう。

 
(フワワの叫び)
 

……本当にすまない。

許して欲しいとも言わない。

たとえ、この場限りの夢や幻バグだとしても——

僕はまた……君をこの森から廃棄する。

なに、造作も無い事だよ。

同じ後悔をするだけの話さ。

こんな存在になるまで君を救おうとしなかった僕には……

当然の報いだ。」